あらすじ
旦那の浮気でムシャクシャしていた私は、学生時代からの男友達と酔った勢いでソープへ行くことになった。こんな子がソープに? と驚いてしまうほど、若くて可愛い女の子によるヌルヌルローションのマットプレイで感じまくってしまう。ああ、このレズ体験クセになりそう!
※約6100文字
まさかソープランドに誘われるとは…
男友達2人と飲んでいた。
スカイツリーのイルミネーションがほど近い、お気に入りの屋台街だ。
大学時代からの腐れ縁である彼らとは、アラサーの今でもこうして時々顔を合わせる。
「おまえさ、ホントいい旦那さんだよな。こうして男と飲むの許してくれるんだもんな」
と最近髪の毛が寂しくなってきた哲彦がジョッキ片手に言い、
「ホント、しあわせ者だよ」とお腹周りにせっせと贅肉を蓄え始めた健介が大きくうなずいた。
それよりさ、と私は話題を変える。
「それよりお嫁さんもらうまでは、哲彦も健介も、もっちょい身なりに気を配れば? それともあきらめちゃってるの?」
2人とも学生時代はシュッとしたいい男だった。相応にモテていた。泣かされた女の子も1人や2人ではない。
それだけに、彼らの輝ける時代を知っているだけに、何とも歯がゆかった。
「いいんだよ、俺たちのことは」
見事なくらいに2人はハモった。兄弟か。まあ、いいならいいんだけど。正直、旦那のことには触れて欲しくなかった。
最近、結婚3年目になる旦那、和也との仲は最悪だ。原因は和也の浮気。会社の派遣社員の女の子に仕事の悩みを打ち明けられ、相談に乗ってるうちにいい仲になってしまった、とは本人の弁。
でも一回だけなんだ、という言い逃れが余計に腹立たしかった。浮気に1回も2回もあるもんか。
浮気の密告をしてきたのは、その女の子に想いを寄せる和也の同僚で、和也と2人で夕食を摂っている時にメールが入った。
自分の知らないところで勝手に形成された三角関係に突如巻き込まれ、平穏な日常を奪われたのだから怒りの度合いは大きかった。穏便になんて済むはずもない。
狂気の夜が幕を開けた。
沸騰した私はテーブル上の味噌汁やら肉ジャガやらをひっくり返し、挙げ句包丁を持ちだした。
和也は逃げなかった。「おまえの気が済むなら」と言って両手を広げた。もしもあの時、悲鳴でもあげながら和也が逃げ惑っていたら、本当に刺していたかもしれない。
チクリを入れる時は相手の気持ちやタイミングを考えろ、場所も考えろ、同僚にそう言っとけ。そんなことを泣き叫び続けた。和也は黙ってうなずくだけだった。沈黙は金。余計なことは言うまいと、心に決めたのかもしれない。
大立ち回りの翌日、役所で入手した離婚届は今も手元にある。お互いの判も押してある。
それでもまだ決心がつかなかった。
私は和也を未だ愛しているのだろうか。
和也は私と別れたら派遣の女の子と一緒になるのだろうか。
自分が傷ついただけで、やがて事態は収束する。そう思うと気に食わない。
和也への復讐――。
いっそ目の前の男2人と夜を共にしてみようか。
そしたら和也はどんな反応を見せるだろうか。
そんなことを悶々と考えていたら、いつもより早く酔いが回った。
「おまえ、女同士でシたことある?」唐突に薄毛の哲彦が言った。
「は? それってレズってこと?」
「そうだよ。ある?」
「ない。レズの傾向はない」
「シてみる気ない?」
「何なの、いきなり。相手がいなきゃ無理じゃん、そんなの」
「相手がいればスるのか?」
「考えたことないよ。最近はそれ専門のマッチングアプリでもあんの?」
ソープだよ、と贅肉の健介が身を乗り出してきた。「俺たちサラリーマンはボーナス時期だから、今日、これから行こうと思ってるんだ、あらかじめ俺たち2人でそう話してたんだ、ついでだからおまえも一緒に行ってみないか?」
「あきれた……私と飲むってのに、そんなこと考えてたわけ?」
「もちろん、おまえと飲むのが俺たちの最優先事項であり最大の楽しみでもある。だけど、楽しみは1つじゃなきゃいけない、って決まりはないだろ?」
それはそうだ。
だけど、まさか女の私をソープに誘うなんて。お姫様扱いして欲しいとは言わないけど、女として見られていない感に自尊心が傷つく。このしょぼくれた男どもと夜を共にしてもいいだなんて、一瞬でも考えた己が忌々しい。
怒ってもいいところだ。
なのに。
「こっから近いわけ?」
そんな風に返していた。
「女でも入れるわけ?」
想像してドキドキしていた。好奇心が勝っていた。女性と交わることに、抵抗を覚えていない自分がいた。
吉原ソープランド街
タクシーで10分ほどで、すぐに吉原のソープランド街に到着した。
あっちの路地にも、こっちの路地にも、ソープランドが軒を連ねている。
圧巻だった。
「やっぱ、やめようかな……」
「まあまあ、ここまで来て、そう言うなって」
男友達2人は、気後れする私の肩を抱くようにして歩き出した。そして、『アイドルセレクション』というお店に私たちは入店した。
受付けの人は私を見ても怪訝な表情を見せることなく、懇切丁寧に接してくれて、女の子の写真を見せてくれた。
「指名はございますか?」
「いえ、特に……」
「すぐにご案内できる子がおりますが、女性のお客様でもかまわないか確認を取ってみます」
「あの、無理にとは言いませんので……」
「大丈夫ですよ。女性のお客様もたまにいらっしゃいます」
その言葉で少しほっとした。
受付けの人はインターフォンで、2言3言、言葉を交わした後、すぐに爽やかな笑みを浮かべた。
「すぐにご案内いたします。そこの階段から2階へお上がりくださいませ」
私の相手をしてくれる女の子は、『リン』ちゃんというかわいらしい源氏名の持ち主だった。
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