言葉責め
耳をしつこく噛んでいたら彼が目を覚ました。
「おはよう」と言ってみた。
「おはよう」と返してくれた。
今度はこんにちは、と言ってみた。こんにちは、と返してくれた。
「眠い? 昨日、練習だったの?」
「うん。ライブ近いし。明け方まで」
「女の子いるんだよね?」
「ボーカルだからな」
「そっか。うん、そっか……」
「嫉妬してんの?」
「みっともない?」
「いや、嬉しい。好きだ、京子さん」
心がほわっとなって、彼の下半身に手を伸ばした。クタリと柔らかかったソレを握ったり揉んだりしていたら、すぐニョキニョキしてきた。
「若いね」
「もう24だ」
ズン、と胸が重くなる。
私にむかって「もう24」はないだろう。
知っている。彼に悪気はない。ただ、あまりにも年が離れすぎているだけだ。
私の気持ちは彼の言動ひとつでアガったりサガったり、とっても忙しない。胸のうちを悟られたくなくて彼の下半身へ移動しようとしたら、
「いいよ。今度は俺の番。さっき散々しゃぶってもらったから」
優しく頭をなでられた。
彼のソレはとても大きい。奥まで咥えるのに苦労する。でも、私の口の中でキチキチに固くなって、跳ね回る感触が好きだった。達した後、小さくなっていくソレを頬張り続けるのも好きだった。だから何回だって私の番でかまわないのだが、ここは甘えることにする。
だって好きなんだ。彼の指や舌が私の身体に加えることの全てが。
仰向けになると彼の頭が下半身に降りてきた。脚を開かれたので、両方の膝を立てた。彼が顔を埋めやすいように。恥ずかしい部分がよく見えるように。
旦那は昔からクンニなんてしてくれなかった。舐められることに何となく嫌悪感があったので別にそれでよかった。
でも今は違う。私はきっと、すでに湿らせている。彼に見られるだけで感じてしまう体質になってしまった。
「あれ、もう?」彼が言った。やっぱり。恥ずかしくて閉じようとしたら、太ももをつかまれて、さらに大きく開かれた。
「すごい、ヌメヌメしてんじゃん」
「ビラビラが痙攣してるぞ?」
「あらら、肛門までお汁が垂れてきちゃってる」
「今日はいつもより濃厚だな。興奮してんの?」
彼の言葉責めが始まる。恥ずかしくてたまらないのに、どんどんあふれ出すのが自分でも分かる。それで恥ずかしさが増す。身体中がじんじん熱くなる。
「言ってみろよ。どうして欲しい?」
「お願い……」
「それじゃ分からないよ。ほら、言えって」
「舐め…て……」
「あん? 聞こえねーよ。もっと大きい声で」
「いじわるしないで! 舐めて! 早くちょうだい!」
京子さんはスケベだな、と言った彼に息を吹きかけられた。
「はぁんっ!」
それだけで、たったそれだけで身体の真ん中を快感がつらぬく。もっと強い刺激が欲しくて、私は腰をくねらせる。おねだり。
当然彼に見透かされる。なかなか直接触れてこようとしない。たまらない気持ちになる。もはや観念するしかなかった。
「お願い、舐めて! おマ○コいっぱい舐めてぇ!」
恥ずかしい言葉を口走る。彼がニヤリと笑った。か、どうかは分からないが、突然もっとも敏感な突起を舌ではじかれた。
「ヒャっ、やんッ!」
でたらめに這い回る舌。かきむしるような乱雑な動き。はじかれ、舐め回され、私は楽器になった。
「ひっ、ア、アァッ! そこ、ダメ、んんっ、ハァンッ!」
彼が望む音だけを奏で続けたいが、たまにノイズが入るのは許して欲しい。彼とのセッションでピチャピチャと鳴り響く水音がやけに艶めかしい。
固く尖らせた舌が女の入り口に侵入してくる。ピリピリと電流が走る。でも舌が入ってこられるのは入り口だけだ。もっと深く、激しいセッションをして欲しくなる。
「ちょうだい…んっ、おっきいの、欲しいよ…深く埋めてぇ……!」
積極的にひわいな言葉を選ぶ。そうしないと、いじわるな彼はソレをくれない。
「おチ○チ○早くちょうだいっっ!」
「そんなに俺が欲しいか。マジでスケベな女だな、京子さんは」
「早くぅ、お願い!!」
彼が正常位で入ってきた。
「んぐっ……」
いきなりふさがれて、一瞬息が止まる。
そのまま身体をナナメにされ、
片足を肩にかつがれ、
もう一方の足に彼がまたがった。
松葉崩し。
一番好きな体位だ。なぜかって……。
「奥まで欲しいか?」
「うんうん、欲しい!」
ズン、と突っ込まれる。勢いよく膣を押し広げ、奥の奥まで到達する。
旦那には届かない場所。自分自身が知らなかった場所。彼が教えてくれた秘境。
内蔵まで突き抜けるような重さを伴うとんでもない快感が、ベースの音のように身体中を包む。彼の睾丸が太ももでこすれる感じも好きだった。
「どうして欲しい?」
この期に及んでそんなことを彼は言う。ちょっとイラっとするが、欲求には抗えない。
「突いて!」
「スケベ」
「奥まで突いてぇぇ!!」
彼が動く。早いピストンではない。奥へグリグリ押し込んでくるような動き。
私はアナタの楽器でありたい。
だからもっとかき鳴らして。
弦が千切れるほど強く、重く。
「もっとキて! もっとよ、もっとぉ!」
切望したら押し込むような動きからピストン運動へ変わった。
私の足を抱きかかえながら猛進してくる。奥へ当たるたびに流れる電流。彼の欲望を受け止め続ける幸福。そして、自分でコントロールできないからこその快感。
何度も何度もえぐられていたら、
「あ、ごめん、何か俺、ちょっと、もうイキそう…うっ」
彼の表情がいきなりゆがんだ。
かまわない。
私の意識が飛ぶ前に彼の熱いほとばしりを浴びたい。
「いいのよ。いつでもおいで!」
彼をちょっと子ども扱いしてみたのは年上女の意地だ。でもそんなの、すぐにひるがえされる。深く重いストロークが勢いを増す。セッション時間がもうすぐ終わる予感と共に頭がふやけて白くなっていった。
「あっ、うわぁぁっ!!」
またグリグリ押し込まれた次の瞬間、彼がビクリと爆ぜた。熱い欲望の汁が私の中に注ぎ込まれるのが分かる。
ドクドクドク――。
息が詰まって声も出なかった。彼が完全に果てるまで、酸素を吸入するので精一杯。キレイな音を奏でられない私はダメな楽器だった。
西日の差す部屋で
少し眠ってしまった。
カーテンの隙間から西日が差し込み始めていた。
精も根も尽き果てて、私たちは布団の上でもつれ合う肉のかたまりと化していた。
重たいまぶたを少し開き、彼の表情をうかがう。
目が閉じられている。
眠っているようだ。
それなら断られて傷つくことはない。だから私は彼の頬をさすりながらもう1度聞いてみた。
「今度ライブ行っていい?」と。
すると彼は目を閉じたまま、うん、とうなずいた。「バンドの仲間、紹介する」 彼が弾くベースの重低音が聞こえた気がして、私はまた、下半身を熱くする。(おわり)
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