あらすじ
派遣先の飲み会で、普段挨拶程度しか交わさない人妻2人組と意気投合!俺の友達と4人で、俺の部屋で2次会をすることになる。半分冗談で王様ゲームをしようと提案したら、あまり遊びを知らない清楚系の人妻2人はノリノリに!
※約8700文字
清楚な人妻と忘年会で意気投合!
2人とも黒髪で、たたずまいが穏やかで、いつも朗らかな笑顔を浮かべていた。
彼女たちは全国チェーンの衣料店やスーパーで買ったようなニットやカーディガンやチュニックをいつも身に付けていて、それらはハッキリ言って安物だが、2人ともスタイルがよくて清潔感があるのでシンプルなスタイルはかえって彼女たちの美しさを際立たせた。
大抵の男は、ゴリゴリのブランド品で着飾った女より、質素な女に好感を寄せる。
ストレートのロングヘアーが涼子さんで、肩までのセミロングが詩織さんだ。
2人は俺の派遣先であるパン工場で勤務している。
俺はラインを流れるパンの仕分けをしていて、彼女たちは事務員をしていた。
同じ工場で働いているとはいえ、あまり接点はない。出社時や退社時に軽く挨拶を交わす程度だった。俺と同じ派遣なのか、パートなのか、正社員なのか、雇用形態もよく分からない。
ところが。
「山梨さん、カンザスってバンド知ってます? 前々からずっと思ってたんですけど、ドラムの人に似てるって、よく言われません?」
山梨とは俺のことだ。
会社の忘年会でロングヘアーの涼子さんにいきなり話しかけられてちょっとビビった。俺の名前を知っていたのが驚きだった。
「カンザスですか、もちろん知ってますよ。この前ライブに行ってきましたよ!」
何気なさをよそおって答えると、
「えーホントですか? 私ファンなんですよ、いいなー」
涼子さんは目をウルウルさせた。
涼子さんは少し酔っていた。頬が赤く火照っていた。薄く引いた口紅がぷるん、と光っていた。
俺は確かにカンザスのドラムに似ているとたまに言われるし、自分でもちょっとそう思っている。決してイケメンではないのが残念なところだが、空気を読んで場の流れを修正できる職人肌のいいドラムだった。
「ボーカルは芸術大学の声楽科出てて、透き通った声が楽器のようですよね。サビの裏声とか、マジしびれます」
素直にカンザスのファンだった。だから、思っていることをそのまま口にした。すると、
「そうなんですよそうなんですよ、新曲聴きました? ドラマの主題歌にも使われてて、クライマックスシーンで流れると私、もう……旦那の前でも……」
感極まって泣き出しそうな涼子さんの隣で、セミロングの詩織さんが穏やかな笑みをたたえながら涼子さんの背中をさすり、おっとりした声で慰める。
「涼子さん泣かないでー」
いや、待て。
今、涼子さんは「旦那の前」って言ったよな?
つまり涼子さんは人妻ってことか。
淡い恋心が砕け散った。
それでも俺と涼子さんはすっかり意気投合した。音楽の話、スポーツの話、好きな食べ物の話などなど。彼女との会話は尽きなかった。
セミロングの詩織さんも話に加わり、俺と仲の良い職場の同僚、長野も加わり、さらに盛り上がって実に楽しい忘年会を過ごすことができた。
詩織さんも残念ながら人妻だったが、美人と飲む酒の美味さが尋常ではないことに変わりはない。
しかし、である。楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。
社長の一本締めで忘年会はお開きとなった。俺たち4人は、俺が飼っているバカ猫の話をしていたところだった。
あっけなく散会となり、会社のみんなは何となく浮ついた気分で、居酒屋の前でたむろしていた。その一団の中に涼子さんと詩織さんもいた。そのまま帰るのが少し名残惜しいのかな、と思った。
彼女たちが課長や係長に軽くセクハラを受けているところに、俺はさりげなく割って入って涼子さんの耳元でささやいた。「良ければもう一杯どうですか?」
人妻だし、断られるのは覚悟の上だった。しかし涼子さんは、「いいですね、行きましょう!」と目を輝かせてくれたのだった。
詩織さんも乗り気だ。「山梨さんのお家で、ってのはどうですか? 猫ちゃんに会いたいです!」
「あーそれいい! 私も会いたい! ダメ、ですか?」涼子さんのおねだり上目遣いにハートを撃ち抜かれた。
ない。ダメな理由など一切ない。
ワンルームのマンションは散らかっていて恥ずかしいが、俺は彼女たちを招待することにした。
俺の同僚、長野も断るはずがなかった。長野は詩織さんに熱を上げてしまった気配があった。
こうして俺たち4人はコンビニで酒とつまみを調達して、夜道をワイワイはしゃぎながら俺の狭いワンルームマンションへ向かったのだった。
いや、正直、下心なんて全くなかったんだ。
微塵も? と聞かれると断言はできないけど、楽しく飲めればそれで十分だと思ってた。
なのになのに……。
まさかあんなにいい思いができるなんて……。
清楚な人妻たちが、あんなに乱れるなんて……。
王様ゲームが始まった!
ワンルームの宅飲みが始まって30分ほどたっていた。俺は4本の割り箸を握っている。
なぜかって?
それはつまり、こういうことだ。
「王様だーれだ!」
俺の手から割り箸が一斉に引き抜かれると、
「はい、私!」と涼子さんが手を上げた。小学生のように元気だった。「じゃあね、それじゃね、1番と3番が10秒間ハグ!」
「えーと、あ、1番は俺!」長野が喜々とした声を出した。
「やだ、3番……」詩織さんがはにかんだ。
モジモジしながら立ち上がったセミロングの詩織さんを、長野がソワソワしながら抱きしめる。
「きゃ~」と涼子さんが可愛い悲鳴を上げる。
「1、2、3……」と俺がカウントダウン。
恥ずかしそうな詩織さんと、しあわせそうな長野の顔。ああ、俺も早くあやかりたい、と思いながらゆっくりゆっくり数字を重ねていったら、
「ちょっと長いよぉ~」詩織さんが照れながら抗議の声を上げた。
ああ、至福。
もう多くの説明は必要ないだろう。
俺たち4人は、王様ゲームを始めていた。
ワンルームに到着した当初は、アルコール度数9%の缶チューハイを飲みながら、涼子さんと詩織さんは猫とたわむれていた。
俺に性格が似た猫はゴロゴロのどを鳴らし、彼女たちを夢中にさせた。
普段あまりお酒を飲まないから、と言っていた彼女たちが、いい感じに再び酔っ払ってきた頃合いを見て、長野が「王様ゲームしたことある?」と切り出した。
そんなことを言ったら帰られるぞ、と内心ヒヤヒヤしたが、意外にも彼女たちは嫌悪感を示さなかった。
「ないよ、女子大だったし、家が厳しかったから合コンとかもあまりないの」
涼子さんがやや不服そうに口をとがらせた。
「私もない。高校の頃からずっと付き合ってた彼氏と結婚したから」
詩織さんもどことなく不服そうだった。
「じゃあ、してみる?」すかさず長野が言った。
「でも、アレでしょ? エッチなことするんでしょ?」
さすがに涼子さんは抵抗を見せたが、
「大丈夫大丈夫。ちょっとだけ。イヤだったらすぐ止めるからさ、青春の忘れ物、取り返しにいこうよ」
あきらめることなく、長野はソフトにプッシュした。
「何それー」
涼子さんは笑った。
その後、涼子さんと詩織さんは「どうする?」とプチ会議を開いたが、ほどなくして話はまとまった。「じゃあ、ちょっとだけなら…」
俺は心の中でガッツポーズをした。
エッチなことをしない王様ゲームは、王様ゲームにあらず。
最初はソフトなハグだったり、手を恋人繋ぎする命令だったが、当然、命令は次第にエスカレートしていくことになる。
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