あらすじ
私と彼氏のえっちな個人撮影動画。スマホに保存しておいたそれを、あろうことか万年ヒラ社員のおじさんに見られてしまう。パニックになった私は、ホテルへ連れ込まれ――誰か助けて! 私ヤラれちゃう!
※約5200文字
会社のキモいおじさん
おじさんが舌なめずりをした。
血色の悪い唇と舌の隙間から、ピチャ、とかすかに唾液の音がもれた。
「ひぃっ!」
背筋に悪寒が走る。鳥肌。
汚れたメガネの奥にある陰湿そうな細い目は、いつもはどんよりしているのに、今はギラついている。興奮で瞳孔が開いている。
はぁ……はぁ……
ふんっ、ふがっ!
一応会社の上司。万年ヒラ社員のおじさんが荒ぶる呼吸そのままに、にじり寄ってきた。
だぶついた頬の肉が揺れている。
信じられないことに首のホクロから長い毛が生えていた。
このまま呼吸困難で死んでくれればいいのに。
「ゆ、結衣ちゃん……ずっとね、僕は君と……こうしたかったんだよ……はぁ、んがっ!」
おじさんは無様につんのめってコケた。
しかしそれは、ベッドのふちに座っていた私にとって不幸でしかなかった。
「キャァァ! いやぁっ!」
会社の制服のまま連れ込まれた午後のラブホテルで、避ける暇もなくにのしかかられ、押し倒されてしまった。
「結衣ちゃん……はぁ、はぁ……」
おじさんが私の両腕をベッドに押さえつける。
男の力だ。
その上、重肥満の体重を乗せられれば、もはやなす術もない。全く身動きがとれなくなってしまった。
「結衣ちゃん!」
親しくもないのに、なぜちゃんづけで呼ばれているのだろう……。
はぁ、はぁ、はぁ――。
おじさんの熱い息が顔に吹きかかる。
ヨダレがたれてきて、頬に落ちる。
恐怖と嫌悪と絶望で気を失いそうだった。
「……っぅ、やめて、くださいっ……」
しぼり出した声が震えた。
「お願いします……他のことなら何でもしますから……恋人が、私には恋人がいるんです……もうすぐ、結婚するんです……んっ」
必死の哀願も意味を成さなかった。おじさんはニヤリと頬をつり上げただけだった。
「だめだよ、結衣ちゃん。結婚前の彼氏さんとあんなエッチなことしたら。しかもそれを撮影して、スマホに残しておくなんて。僕、アレ見てショックだったよ」
「くっ……」
キモいおじさんの濃厚キス
うかつだった。
おじさんに、スマホに保存しておいた個人撮影動画を見られたのが悪夢の始まりだった。どうして私は、昼休みにスマホをデスクに置いて、トイレに行ったりなんかしたのだろう。習慣でロックはかけたはずなのに……。
「結衣ちゃんさ、ジュプジュプって、激しい音を立てて彼氏さんをしゃぶってたよね。僕もして欲しいな、あんな風にさ」
動画には愛しい彼との交わりが映っていた。
あの日は友達の結婚式でふたり共お酒が入っていた。
幸せそうな新郎新婦を見て気分も高揚し、彼のマンションに寄ってお互いもつれ合うようにしてすぐに始めた。
彼氏がスマホで撮影を始めても止めなかった。
むしろ私も高じていたから、彼氏を挑発しようと自慢のヒップを突き上げ、左右に揺すりながらソファーの上でフェラチオしたり、オナニーしてみせたりした。
あの動画をおじさんに見られたと知った時、恥ずかしさのあまりパニックになった。
「お願いしますお願いします、お金なら何とか工面しますから……」
おじさんはふんっ、と鼻で笑い、腕の力を弱めず笑みを浮かべたまま、その油ぎった顔を近づけてきた。
「いやぁぁっ!」
「会社の人にバラされたくないよね? 分かるよ。うん、分かる。そんなことされたら、仕事に来れなくなっちゃうもんね。僕のスマホで撮影しちゃったから、彼氏さんの会社にも送っちゃおうかなぁ――」
ぶちゅ。いきなり唇をふさがれた。ナメクジが這ったらこんな感じなんだろうな、と思った。
「んんっ!」
さらにおじさんの舌がうごめき、口の中に侵入してこようとする。
歯を食いしばっていると、おじさんの片手が太ももに向かい、内側をさすられた。それが徐々にアソコへ向かってくる。
私は自由になった方の腕でを払いのけようとしたけれど、やっぱり全然ムリで。それどころか隙をつかれて、やけに固い舌の侵入を許してしまった。
「んっ、んんっ……」
舌がレロレロと口の中を動き回る。
頬の内側を舐められ、歯茎を舐められ、舌を強く吸われ、唾液を流し込まれるのが分かった。
それを飲み込んでしまい、猛烈な吐き気が込み上げてきた。
「うぇっ!」
えずきながら、おじさんの舌を噛み切ってやりたくなったけれどそれもできなかった。
太ももを這う指がついにアソコへ到達した。
いきなり強く押され、
「んくっ!」
思わず体が反応してしまった。
それでますます鼻息を荒くするおじさんは、ヌチャ、と糸を引かせながら口を離した。
「はぁ……結衣ちゃん、感じちゃったのかな?」
「ち、ちがっ……!」
「いいんだよ、遠慮しないで。僕もこう見えて昔はモテたからね、女の人がどうすれば悦ぶか、よく知ってるんだ」
うへへ、という感じの気味悪い笑顔を浮かべたおじさんのせいで、絶望はより深くなった。
どうして……。
どうしてこの状況でくだらない自慢話を……。
聞かされなくちゃならないの……?
おじさんの手がパンティの中に入ってきて、密林をシャリシャリとひっかきながら、女の部分に触れた。
「あれ? 濡れてないね?」
あたりまえだ。
濡れるわけがない。
優しい恋人の指とは違う。
「仕方ない。舐めてあげよう」
イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ、
あの変色しかけたおぞましい舌に舐められたくなんかない、イヤだ!
願い空しく、おじさんの頭は私の下半身に埋まった。こんなにイヤなのに、すでにずいぶん気力を削がれちゃったし、弱みを握られた私には拒否することなどできないのだと、半ばあきらめかけていた。
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