兄貴のこと好きなのに
自分じゃないみたいだった。
さっきまでの獰猛な気持ちがすっかり消失していた。
ひたすら泣きじゃくっていた。
「俺……くっ、うっ……好きなんだ……兄貴のこと……ううっ、優しくて、心が広くて、気が小さい俺のこといつも引っ張ってくれて……なのに俺……」
固いキッチンの床に正座していた。苦しくて自分の頭を叩いた。胸を叩いた。太ももを叩いた。
消えて無くなってしまいたかった。
「ごめん、美咲さん……家、出てくから……2度とふたりの前に姿を現わさないから……くっ、うぐっ……イヤな思いさせちゃって、ごめん……」
遠くに行こう。
知っている人が誰もいない、どこか遠くへ。
兄貴にも美咲さんにもこれ以上迷惑をかけないように。
「さよなら……」
立ち上がろうとしたその時だった。
俺の体はふいに、温かいものに柔らかく包まれた。
「セイヤ君……」
美咲さんが俺を抱きしめてくれていた。
そして、
「一回だけだよ」
耳元でささやいてくれた。
「報われない恋のつらさ、分かるよ。でも、乗り越えなきゃいけないの。世の中はつらいこと、悲しいこと、そんなのばっかりだけど、大人なんだからどこかで折り合いつけなきゃいけないの」
「ぐっ、うぐ……美咲さん……」
「今晩だけ、セイヤ君のこと好きになってあげる。君がいなくなったら私も旦那も寂しいから。だから、今日で折り合いつけるんだよ。セイヤ君、こっちにきて……」
美咲さんに優しく肩を抱かれて、俺は寝室へと向かった。
兄嫁のカラダ
暗がりの中、兄嫁の全裸がベッドの上に浮かび上がる。
「おいで……」
微笑み、美咲さんは自ら足を広げた。
彼女の中心。
黒々と茂る草原の奥に目が吸い寄せられた。ぬらぬらとうごめく女の赤い切れ込みがあまりに生々しかった。
「激しくしてもいいよ」
「ほ、本当にいいの?」
コクン、と笑みを絶やさないまま美咲さんはうなずいた。
収まったはずの欲望が一気に再燃した。頭に血がのぼり、気がつけば美里さんの赤い切れ込みにむしゃぶりついた。
「ハァッ、あんっ! すごっ……!」
桜色の敏感すぎる突起を固く尖らせた舌先ではじくたびに、美咲さんの体は大きく跳ねる。
「ンッ、はぁ、アンっ!」
愛おしい愛おしい茂みの奥の全部をデタラメに舐め回し、吸い尽くす。震えるヒダを唇でつまんだ。
「ひっ、ヤッ、あぁっ、ンアッ!」
いきなりドクッ、と大量の愛液があふれ、口の中に入ってきた。酸味が効いている。汗の味とは全然違う。シャリ、という茂みの感覚が鼻先をくすぐる。
「あんっ、セイヤ君ばっかり!」
切ない嬌声の中に抗議の声を混ぜ、美咲さんは俺の頭を押し返した。
「弟のクセに私を感じさせるなんて……生意気……」
息を整えながら、美咲さんは俺の股間に顔を埋めてきた。
「うっ、がぁ!」
男性器が温かいものに包まれた。
クチュクチュ、チュパ、ジュル。美咲さんの舌がカリにまとわりつく。
「あぁっ!」
どうしても声が出てしまうが、美咲さんは止めない。
俺の顔を上目遣いで確認しながら絡めた舌でこすってくる。
裏筋にコリコリと力を入れ、尿道の先をつつく。かと思えば頭を激しく上下させ、強く吸い上げる。
「ひゃっ!」
俺がビクリと体を痙攣させると、美咲さんは男性器から口を離した。そして代わりにおっぱいで包み込んだ。
「これしてあげると、旦那が喜ぶの」
美咲さんは余計なこと言いながら、肉棒を圧迫するようにオッパイを両手で押しつけ、そして上下に動かした。
乾かないようにツバを時折たらすから、摩擦も適度だ。あり得ないくらい柔らかい物に蹂躙され続ける肉棒。パイズリの信じられないほどの快感を初めて知った。
「あっ、くぅ、美咲……さんっ!」
さっきまで激しい抵抗を見せていた女性と同一人物とは思えなかった。美咲さんは時に妖艶な笑みを浮かべながら、俺にとんでもない快感を与え続ける。体の奥から射精の予感が迫り上がってきていた。
「もう……ダメだ……」
弱音を吐くと、美咲さんは言った。
「いいよ、イっても。でもそれで今日は終わりだよ」
冗談じゃない。そう思った。
パイズリもいいが、やっぱり美咲さんの奥深くに熱き血潮を放射したい。
俺はオッパイから肉棒を引き抜いた。引き抜くときの摩擦がヤバかったけど、どうにかこらえた。
美咲さんをベッドの上に改めて押し倒した。
「きゃっ!」
さっきまでと打って変わり、可愛らしい悲鳴。しかし可愛らしいのは声だけだ。足を押し広げると美咲さんの赤い切れ込みはテカりが増していた。そのテカりは、生々しい淫肉のうごめきを際立たせるばかりである。
「美咲さん……はぁ、はぁ……」
呼吸が乱れ、荒くなるのを止められなかった。
俺はカッチカチに隆起した肉棒を火照った切れ込みにあてがい、一気に押し込んだ。
「はぁんっ、アァ!」
美咲さんの体がはじける。細い腰を両手でつかんでさらにに奥まで押し込めると、
「んぐっ、アァァッ!」
悲痛な声と共にその体が弓なりに反り返る。俺の肉棒は女の湿地帯に奥まで完全に飲み込まれていた。あまりに柔かな感触が常にうごめき、肉棒にまとわりついてくる。
俺はすぐに達しないよう注意しながら、腰を2度、3度とゆっくり動かす。
「んぁっ、ハぁんっ!」
美咲さんは切れ長の眉を苦悶にゆがませ、シーツをぎゅっと握った。腋の下からオッパイへ向かう急激なカーブがたわん、と波打った。
「俺のこと好きって言って」
「好きよ、セイヤ君」
それが俺に折り合いをつけさせるための言葉であることは分かっているが、胸が喜びに満たされる。喜びは肉棒をたぎらせる。
ズン、と腰を押し込んだ。
「アァッ!」
またのけぞる体。首も反り返る。丸みを帯びた可愛らしいアゴに咬みつきたい気分だった。
ズン、ズンっ、ズシュ。
「やっ、あっ、うそ重いっ! ハァっ!」
美咲さんの膣がうねり、肉棒を締め上げてくる。
緊張と弛緩を繰り返すその感触は、骨のないヌメった軟体動物が亀頭を這い回っているようである。
あふれる美咲さんの愛液や汗がシーツに淫らなシミを広げていく。
俺は何回も何回も軟体動物を肉棒でつらぬいた。
ズブ、ズブ、ズンッ!
「アンっ、ぁぁ、ひぁっ!」
その時だった。美咲さんが思いがけないことを叫んだのは!
「うそ、ダメっ、やだ、イっちゃう!」
そして美咲さんの体が小刻みに震え出した。
太ももが、シーツを握る手が、反り返った首が、ぺったんこの下腹部が、わなわなビクビクと震えている。乳首の先まで震えていた。
兄嫁の同情によるセックスだったはずなのに、いつのまにか形勢が逆転していた。女性をイカせる器が自分にあるとは思えなかったが、実際に美咲さんは激しくのたうち回っている。
「イクイクイク! やだっ、ダメぇぇ!」
絶対に美咲さんを昇天させたい。湧き上がる強い思い。
その一念で、俺は渾身の力を込めて突き上げた。
グチャ。何かがつぶれるような感触。
「ヒぃぃぃっ!」
次の瞬間、美咲さんの体は一瞬硬直し、次いで体中の力を解放するような波動で震えた。
「イヤぁぁぁっっ!」
白目をむいて達した美咲さんの尋常じゃない痙攣が俺の肉棒を襲う。そこに真空が発生したかのように吸いつき、絞り上げてくる。
俺の下腹部にも凄まじい快感の予兆が生まれ、一気にふくれ上がった。
「あぁっ、美咲さんっ! 俺も! イクぅぅぅ!」
外に出すつもりだったが、その瞬間はアッという間に訪れてしまった。
「んがぁっ!」
コントーロールできないまま、熱い白濁が尿道を勢いよく伝う。美咲さんの膣がそれを絞り取るように絶えず締め上げてくる。
だく、だく、だく、だく――。
美咲さんに、ほとばしる白濁が大量に流れ込む。頭が真っ白になるような快感だった。
だく、だく――。
やがて放出が終わった。俺は力尽き、肉棒をニュルンと抜いて美咲さんの隣に倒れ込んだ。
「み、美咲さん……?」
「んっ、くっ……あぁ……」
意識がもうろうとしているのが明らかだった。
これが最初で最後だ。
俺は折り合いをつけるため、美咲さんを抱き寄せ、そっと口づけをした。
兄貴、ごめん……。
俺、兄貴が出張の間に美咲さんを抱いてしまった。
どうやら美咲さん、中イキは初めてだったらしい。尊敬する兄貴にもできなかったことを、俺は美咲さんに与えてあげたんだ。誇らしい気分だったよ。
実はあの後、もう1度求められたんだ。
いや、あの後だけじゃない。
兄貴が家を空けている間、俺たちは何度も体を重ねた。何度も何度もお互いの体液を混ぜ合わせたんだ。
兄貴……。大好きな兄貴……。
心底申し訳ないと思ってるよ。兄嫁と体を重ねた後は、いつも罪悪感でいっぱいになる。
兄貴は明日、海外から帰ってくるね。お土産楽しみだな。
だけど、ごめん。
俺と美咲さんはもう離れられそうにない。
だって、兄貴が明日帰ってくるというのに、今も兄貴と美咲さんの寝室で俺たちは――。(おわり)
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